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2010.07.09

朝日の記事に疑問--高校無償化をめぐり(1)

朝日新聞西部本社版7月8日付朝刊の記事:

「2010参院選 現場から問う【9】」

高校無償 消えぬ格差

 「公私格差をなくせ」「私たちを親不孝にしないで」。
東京都心の日比谷公園から銀座まで、約3200人の列にのぼりが翻った。
 参院選公示直前の6月20日。私立高校に通う各地の高校生と保護者、教職員らによるデモ行進だ。訴えは一つ、「私立も無償化を」。
 民主党政権の目玉の一つとして、今年4月に始まった「高校無償化」制度。全国平均で年間約12万円の全日制公立高校の授業料をすべて無料にする一方、私立の生徒にも同額の12万円を補助している。しかし、私立高校の授業料の全国平均は約32万円(2008年度)。低所得層では補助額が加算されて24万円まで認められることもあるが、なお届かない。「学校から授業料の督促状が来た」「友だちは弟も私立高校に入り、学費を工面するため自分が退学した」。家計が厳しくても、公立に落ちれば私立に行くしかない。他に選択肢がなかった生徒たちの訴えがビル街に響いた。

「何も恩恵ない」

 苦しい生徒は、公立にもたくさんいる。
 「うちは、なーんにも恩恵無いですよ」
(朝日新聞の記事より引用)

記事はこのあと、低所得世帯には従来「授業料免除制度」があったが、無償化制度が始まっても支援に上積みがなく、授業料以外の負担が依然としてのしかかっていることを述べる。もともと授業料免除だった低所得世帯には何も恩恵がない、無償化は格差を解消しない、というわけである。

 しかし、苦しんでいる世帯を置き去りにしたままでは、格差はさらに開くばかりだ。「制度には致命的な欠陥がある」。当の文部科学省の幹部も、こう認める。
(朝日新聞の記事より引用)

私はこの書き方に違和感を持った。

(1)無償化で「公私の格差が開いた」と言えるのか?
低所得で私立に通わせている世帯には24万円の補助額がある。
公立→約12万円補助
私立・低所得者→24万円補助

格差は開いてはいない。低所得者に限れば、公私格差は少しは縮まったのである。
低所得世帯の私立高生の授業料が完全無償になっていない、ということなのだが、それを「格差はさらに開くばかり」というのはおかしいのではないか。
「高校無償化制度のせいで格差がさらに開いた」と印象づけるような記事になっている。

(2)自治体の政策を無視しているのはアンフェアではないか?
実は、自治体によっては低所得・私立高生の授業料を無償化にしているケースがある。

「私立高校も一部世帯は無償化 広がる各地の動き」(ベネッセ教育情報サイト)

京都府:年収350万円未満の世帯に対して、府内私立高校の平均授業料である64万円を限度に、授業料を負担する
大阪府:年収350万円以下の世帯に対して、府内私立高校の平均額55万円までを負担。それを超える額は、各私立高校が給付型奨学金などの形で一部負担する
愛知県:年収255万円以下の生活保護世帯などが対象だった無償化措置を、同約350万円未満にまで拡大し、約350〜830万円の世帯に対しても補助額を上積み
広島県:250万円未満程度の世帯で授業料などを全額免除し、350万円未満程度の世帯に対しても補助率を2分の1から3分の2に拡充

各自治体では以前から、独自の財源で、世帯収入によって私立高校生の授業料負担を軽減する「減免制度」を設けています。そうしたなかで国が、私学にも授業料の一部減額措置を行うことになったため、その分に使っていた予算を、自治体独自の上乗せ措置として振り向けられるようになった、というわけです。
(ベネッセ教育情報サイトより引用)

すべての自治体がこうした政策をしているわけでないとはいえ、国の無償化政策が自治体に私立の無償化・負担軽減を促した面はあるのだ。
冒頭の朝日の記事では、こうした動きはまったく書かれておらず、「私立は低所得でもみんな授業料負担があって可哀相」なイメージを強調している。

国が公立と私立(一部)に授業料補助を行うことで、自治体はそれまでの授業料免除等の支援費が浮く。その費用をさらに低所得者支援に使うことは自治体の裁量でできることだ。それを「低所得者支援はヤメ」にしてしまうのは、自治体に大いに責任があるのではないか。

同じ「公私格差をなくせ」デモの報道記事でも、毎日.jpはこう報じる。
(魚拓) http://megalodon.jp/2010-0621-1349-59/mainichi.jp/area/tokyo/news/20100621ddlk13040152000c.html

しかし、参加した生徒らは「自治体によって支援制度が違い、格差がある」などと現状を紹介。

短い記事ながら、「自治体による違い」を書いている。
朝日の記事は、長々と書いている割には、自治体のことにまったく触れていない。
以前の授業料免除は自治体が行ったことであり、国の無償化制度によって授業料が補助されたのに自治体の低所得者支援がなくなったことについて、自治体を不問にして国の無償化制度に問題があるとするのは、アンフェアではなかろうか。

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