« 高校無償化と公私格差--マスコミが言わないこと | トップページ | 配偶者控除を基礎控除に一本化すべきである »

2010.08.08

参院選・得票と議席のねじれ--腑に落ちた分析

参院選の結果は

「得票数最多の民主党が、議席数では第2党」(得票数2位の自民党が議席数第1党)

というものだった。

国会も「ねじれ」になったが、参院選結果自体がねじれている。

これは1人区で自民党が圧勝したためであり、1人区(人口の少ない県)と複数人区(大都市部を含む都道府県)の「1票の格差」の表れでもある。
1票の格差の大きさが自民党有利にはたらいた。なんせ参院選では1票格差が5:1まで開いているんだから。

…と思っていたのだが、…ん? ちょっとヘン?

もしも格差を是正して、人口に見合う定数割り当てにしていたら、民主党はもっと議席を獲得し、自民党に勝てていただろうか?

例えば神奈川選挙区で落選した千葉景子さんは当選しただろう。東京は現行定数5よりずっと多くなるから、民主党候補がもっと多く当選しただろう。大阪も同様。

しかし、人口に見合うだけ定数を増やせば、民主党以外の党にも当選者が出てくるよね。
自民党は東京で複数が当選する、共産党も議席獲得できる(小池晃さんは次点だったね)、みんなの党も増えるだろう。
都市部で増えるのは民主だけっつうわけじゃないなあ。

格差是正→人口と定数をほぼ比例させる→人口の多い都道府県の定数を増やす
ということをやって、民主党が一人区の負けを都市部で挽回して議席数でも上回るようになるのか?

…この答えをちゃんと計算した人がいる。
菅原琢准教授である(「世論の曲解」の著者)。
菅原研究室紀要:【2010年参議院選挙分析】得票と議席の「ねじれ」について

菅原さんの計算では、人口と定数の不均衡を是正しても、議席数の与野党比率は「さして変わらない」とのことである。

では、得票数と議席数のねじれはなぜ生じたのか?

 得票と議席のねじれは、定数不均衡ではなく、小選挙区と中選挙区の混合によってもたらされています。より正確には、農村で小選挙区、都市で中選挙区となっていることが、自民党に極めて有利に作用し、ねじれを生んでいます。 (上記のサイトより引用)

これには「あっっ!そうだったのか!」と、思わず膝でも肘でも打ってしまうのだった。

自民党が元々強いところでは「いちばん」だけが勝ち残り(「一番じゃなきゃダメなんです」)、
あまり強くないところでは「二番だっていいんです」。
つまり、両方で「いいとこどり」したわけね。

もし、地方農村部も都市部も小選挙区制だったら…自民党は農村部で勝っても都市部で勝てなかった。
もし、地方農村部も都市部も中選挙区制だったら…民主党は農村部でもそこそこ議席を得た。
小選挙区、中選挙区、どちらかに統一されていたなら、民主党は大敗せず、自民党(+公明党)と同等かそれ以上の議席を得ただろう、と菅原さんは言う。

※読売新聞の試算では、今回参院選の得票結果を衆議院の選挙制度にあてはめると、民主党は大敗どころか、過半数を得たそうである。衆議院はどこも小選挙区だからだ。この試算は菅原さんの分析を裏付けている。

菅原さんの論を読むと、現行の参院選挙制度はかなり歪んでいると思わざるをえない。
自民党に有利だから、ではなくて、一貫性があるべきところに異なるルールを適用しているような、「ダブルスタンダード」に近いではないかと思うからだ。
選挙制度に異なる思想のシステムを組み合わせる、選挙区・比例並立とはまた別モノだ。
選挙区・比例並立は、選挙区で死票が生じるのを比例区で補うことができるので、小政党は比例で議席を得られる(比例がなければ社民党・共産党はとっくに議席ゼロだ)。
有権者一人がA方式(選挙区)とB方式(比例区)に投票するのだから、有権者間の不公平はない。
だけど、「地方で小選挙区、都市部で中選挙区」は一方が他方を補う効果はないしね。居住地によって別の制度の選挙やってるみたいなものじゃないかと。

衆議院の小選挙区制は「死票が多い。民意を反映しない。小政党が埋もれる」と批判する声も多いが、「小選挙区・中選挙区混合」の参議院選挙区のほうが問題アリなのではないだろうか。

  *  *  *

余談だが、小選挙区・比例並立でも、昔の中選挙区制でも、小政党の獲得議席数はほとんど同じかも。いや、ひょっとすると、中選挙区制に戻したらさらに議席を減らしかねない。定数5の東京選挙区で共産党が議席を取れなかったことを考えると…(中選挙区制は定数3〜5が基本)。「議席が少ないのは小選挙区制のせい」ってのは責任転嫁では。共産党(等)の執行部は菅原さんくらいに分析してみてはどうだろう。

もうひとつ余談。自民党は参院選の結果に気を良くして「解散総選挙を!」と言っているが、比例票の結果からしても、今衆院選をやったら自民党が勝つとは全然言えない。昨年よりも民主党批判や失望が多くなってはいても、自民党支持が民主党支持を凌駕するまでにはなっていないのだ。それをわかってるのかな? 小泉進次郎さんはわかってるようだけど…。

|

« 高校無償化と公私格差--マスコミが言わないこと | トップページ | 配偶者控除を基礎控除に一本化すべきである »

「経済・政治・国際」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/132693/49079652

この記事へのトラックバック一覧です: 参院選・得票と議席のねじれ--腑に落ちた分析:

« 高校無償化と公私格差--マスコミが言わないこと | トップページ | 配偶者控除を基礎控除に一本化すべきである »