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2010.08.29

再分配のパラドックス

「再分配のパラドックス」という言葉を最近知った。

経済学で言われている言葉で、要はこのようなこと。

「貧しい人(“本当に支援が必要な人”)に限定・集中して支援を行うと格差や貧困を少なくするように思えるが、実は逆である。医療・介護・子育て・教育などを、所得の高低にかかわらず広く保障するほうが格差は縮小し、貧困が減少する」

なぜかというと…


“本当に支援が必要な人”にのみ集中的に支援する方法は、

・支援の有る/無しのギャップが大きい
・ボーダー付近で支援を受けられない人は、支援を受ける人より苦しくなる「逆転現象」も起きる
・支援を受ける人へのまなざしが非常に厳しくなる(「本当に困ってるのか?」「怠けてんじゃないのか?」「ウチだって苦しいのに、不公平じゃないか」etc.)
・支援を受ける条件・審査を厳しくせよという圧力が高まる
・条件がどんどん厳しくなり、ボーダーが下がる
・支援されてしかるべき人が除外されていく
・支援全体が縮小する

…したがって、貧困も格差も少なくならず、かえって大きくなってしまう。
また、支援を受ける人は収入が少し上がって「支援なし」状態になるとかえって苦しくなるので、貧困から抜け出すことになかなかならない。「がんばって働くのがバカらしい」空気が醸成され、貧困は減らない。

諸外国の例を見ると、アメリカ、イギリスが「支援を限定的に行う国」、北欧が「支援を広く行う国」である。
こんなデータがある(少し古いが)。

Data_social_2

(「ナショナルミニマム研究会」(PDF)6ページ目「3-2.垂直的再分配より水平的再分配へ」 神野直彦(関西学院大学教授))

アメリカ、イギリスは社会的扶助支出(生活保護支出)が高く、相対的貧困率も高い。生活保護に多く支出しているのに貧困率が高いのだ。北欧は広く保障を行い、生活保護支出は少なくて貧困率を低く抑えている。

そもそも社会保障が手厚い北欧を引っ張り出してもね…その分税負担も高いし、あんまり参考にならないんじゃない? と思う向きもあるだろうが。
「貧しい人や“本当に必要とする人”に限って手厚くする」(恵まれない人に愛の手を、的な)福祉政策が貧困や格差を少なくするベターな方法、とは言えないことを示している。

子ども手当や高校無償化について、広く薄くバラまいたら「本当に支援が必要な人」を助けることにならないんじゃないか、という反発・批判がある。だから所得制限しろとか。
しかし、生活保護という、まさに「経済的に困っている人」への支援に対して、上に書いたような厳しいまなざしがある現在、子ども手当・高校無償化を「本当に支援が必要な人だけ」にしたら

支援が必要な人----<段差>----支援が必要でない(と見なされる)人

の<段差>がますます大きく認識され、ひいては、所得制限額の引き下げ・条件厳格化が進むのではなかろうか。

もちろん、あらゆる分配・支援をすべての人に行うことはできない。所得などで区切る支援策は当然あり得る。だが、その際にも、なるべく段差をなめらかにし、脱・貧困のインセンティブを持たせる策が必要だと思う(たとえば給付つき税額控除など)。

次のブログエントリに、大いに共感する。
・「子ども手当て — 「本当に必要としている人」などいない」(dongfang99の日記)

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