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2010.09.19

「世論調査の正しさ」と「世論の正しさ」は違う

「世論調査」と「世論」について、両者が錯綜してるんじゃないの?
と感じる話が一部ツイッター界隈にあったので一言。

「世論調査の正しさ」と「世論の正しさ」は違う。
ということは押さえておこうよ。

以下、一言プラスαをぐだぐだと述べてみる。

世論調査が正しい、とはどういう意味か。

※「正しい」という言葉は語弊があり、「信用性」「有効性」と言うべきかと思うが。

世論調査が正しい(信用性がある)とは、調査に表れた意見や認識が正しく信用ができる、という意味ではない。あくまでも「データとしての信用性」である。

世論が正しい(信用性がある)とは、その意見が良いかどうかの価値判断にかかわることだ。

こんな例で考えてみる(数値は架空のもの)。

・高校生を対象に「日本は過去にアメリカと戦争をしましたか?」と訊ねる調査をした。
40%が「した」と答え、60%が「しなかった」と答えたとする。
調査は「今の高校生は6割がアメリカとの戦争を知らない」と結論づけた。
さて、この調査は信用性があるか?

調査方法(サンプリング等)が統計調査として一定の要件を満たしていれば、信用性があると言える。

しかし、「6割がアメリカとの戦争を知らないこと」が正しいか、良いことか、といえば、正しくはないだろうね。重要な歴史的事実を知らないのはよろしくない。

さて、この調査をある新聞社が行い、日頃から新聞報道に疑問を持つ人々が、「この調査はおかしい」と言い出した。
曰く「ネットで同じような質問を高校生相手にしたら、9割以上が知っていたぞ。新聞社の調査はインチキだ」
その人々は「歴史研究ネット」や「歴史を考えるブログ」に集まる人たちで、そこに高校生も大勢参加していたから調査したのだという。
この人々が言う「ネット調査」は、前記の新聞社調査よりも正しいだろうか?

答えは、否である。

ネットに自主的に参加し自主的に答えた調査では「今の高校生は○割が****を知っている」と結論づけられるような「調査」とは言えない。歴史をテーマにした場に参加してるのだから歴史に関心が高い人が多いわけで、「今の高校生」よりも狭い範囲の生徒の回答なのだ。それを高校生全般に広げた「調査」であると言ってはいけない。

  *  *  *

以上のような話に、いろいろな反応があって。

「6割がアメリカとの戦争を知らないなんて、教育がなってないじゃないか。
「某教員団体が高校生を学力低下させようと偏向教育しているせいだ」
「官僚と新聞社が結託して調査の数字を操作しているのだ」
「新聞社の調査に答える高校生はマスコミに騙されている」
「新聞社の調査に答える高校生はレベルが低い」
「新聞社の高校生歴史認識とネット高校生歴史認識とは対立軸である」
「新聞社の調査もネットの調査もどっちも一部の高校生。どっちも参考にならん」
「新聞社の調査を正しいと言い、ネット調査を参考にならないと言うのは、ネットの歴史認識を切り捨てるものだ」
「ネットの歴史認識をもっと広めよう」

う〜ん。錯綜している。

高校の歴史教育の問題は、調査とは別問題として論議すべきであるし、
新聞社の報道のあり方も世論調査とは別に検証・批判すべきである。
調査としての妥当性は、調査方法を検討すべき。やり方を工夫すればネット調査も妥当な調査になるかもしれない。
ネットの世論とか認識には、トンデモ歴史認識、トンデモ偽科学、トンデモ陰謀論…もあるのは言うまでもない。もちろん実社会にもそれらは存在しているが、ネットは実社会よりもアクセスしやすく広まりやすい。

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